秋の深まりを感じられる11月は、温かいお料理に合わせるワインを選ぶのが楽しい季節です。シルキーで柔らかいタンニンをもつメルロは、フルボディな赤ワインとして料理との相性において、幅広いチョイスを与えてくれます。 

この品種は、カリフォルニアの土地にとても馴染みやすいがゆえに、各産地やワイナリーごとの醸造方法の違いで様々なスタイルのワインを楽しむことができます。更に、世界中で栽培され非常に高い適応性をもっているブドウの一つで、フランスのボルドー地方に故郷を持つことから、同じフルボディのカベルネ・ソーヴィニヨンとよく比較されます。女性的だが本来は力強いメルロー、男性的だが何故かデリケートなカベルネ・ソーヴィニヨン、多くの栽培家が口を揃えていう両者の特徴です。

水捌けの悪い粘土質の土地や平坦な土地でも力強く育ち、柔らかなタンニンを放つ美味しいワインを産みだす品種、メルロ。その一方、男性的な骨格のタンニンを放つカベルネ・ソーヴィニヨンは、比較的、栽培される土地に好き嫌いを示し、水捌けの良い礫質や山肌の土地など限られた場所でのみ本領を発揮する傾向があり、デリケートなブドウとも言えます。

カリフォルニア州のほとんどは、火山の噴火により形成された火山土質の土地のテロワールで、メルロは、高い適応性でこの地に根付き、特に90年代に起きた健康志向からの赤ワインブーム以降、栽培面積数は一気に増加し生産量はピークになります。そして、このシルキーで柔らかいタンニンを持つメルロは、愛飲家を魅了し、カリフォルニアを代表するフルボディの赤ワイン品種となりました。更に、醸造工程においてもメルロは操作性が高く、しっかりと抽出を図った本格的な長期熟成タイプから、果実の美味しさを絶妙のタイミングで引き出したスタイルまで。また、異なる樽容器で熟成させるなど豊富なスタイリングが可能です。

さあ、今宵は、心も身体も温まるシチューやスペアリブ、お友達とのカジュアルなBBQなどのお供に、カリフォルニアのメルロは、いかがでしょうか?

文:川邉久之(ワイン醸造技術管理士)
画像:https://www.instagram.com/petalumagap/