1970年代、カリフォルニアのセントラル・ヴァレー(現在のインランドヴァレーズ)を中心に栽培されていたグルナッシュ。この赤品種は、低価格帯の大衆用ジャグワインの原料ブドウとして、カリニャンとともにトップクラスの生産量を誇っていました。

1980年代後半に起きた「赤ワインのポリフェノールがもたらす健康増大効果、フレンチパラドックス」が、1990年代初頭にアメリカCBSドキュメンタリー番組「60ミニッツ」で紹介されると地球規模の赤ワインブームが起こります。そして、カベルネやメルロー品種に人気が集中し、グルナッシュの収穫量は一気に減少し存在感をなくしていきます。

また、シャルドネやカベルネなんてウンザリというABC(Anything But Chardonnay, Cabernet)という風潮がワインラバーの間で起こり、品種の多様化に流れを求めます。斬新なニューウェーブ、ボニー・ドゥーン・ヴィンヤードに代表される、ローヌ品種を極めるグループ、通称”ローヌ・レンジャー”が出現。プレミアムワインの産地であるサンタクルーズやソノマなどで、SGC(シラー、グルナッシュ、カリニャン品種によるローヌスタイルのワイン)が見直され、グルナッシュは、無くてはならないブレンドの立役者として返り咲きします。

現在では、カリフォルニアの多くの地域でサステイナブル認証が導入されています。温暖なテロワールにおいて栽培で多くの農薬を必要とせず、手間要らずに元気よく育つグルナッシュは、地球温暖化対策の品種として、再び需要が高まり、次世代へつなぐSDG’sワインメーキングにおいて確固たる地位を確立したのです。

カリフォルニアの気候が下支えする、芳醇な果実の風味の肉厚の特徴と共に、料理を選ばずにカジュアルからフォーマルまで合わせることができる実力派品種、グルナッシュ。

カリフォルニアの長い歴史の中で、名脇役という確固たる存在感を放ちつつ、進化したこの品種のワインをあなたのセレクションに加えてはいかがでしょうか?

文:川邉久之(ワイン醸造技術管理士)