7月から8月にかけて、グリーンピースのように硬い緑色のブドウの果粒は、軟らかくなり果汁を蓄え始めます。黒ブドウは、徐々に赤くなりはじめ、白ブドウは、黄緑色を帯びてくる、このワクワクする時期を「ヴェレゾン」と呼びます。
緑が生い茂る夏季は、ブドウの枝や葉を整え、風と光の道を確保する交通整理が必要です。「樹幹管理」と呼ぶこの行程により、ブドウの色づきが促進、果汁の糖度が上昇し、熟度の均一化や風味の増加が可能となります。
中でも大切なのが、「除葉」というブドウの房の周囲の葉を取り除く手仕事です。太陽光をしっかり吸収させ、ブドウ房の間に風が吹き抜けるのを促して病気を回避できるため、農薬散布の低減につながり、有機栽培を可能にします。この作業は、午後の強い日差しでブドウが焼けないように、ある方向の葉だけ残す繊細な熟練の技が必要なのです。
今では光や風を測る計器で、さらに良い成果を上げられます。その土地の特性を熟知したカリフォルニアの栽培家に、光と風を感じてきた長年の経験が加わることで、芸術品に匹敵する品質の高いブドウが生まれます。
ブドウの外観、味、香りは、ワインの品質を決定づけます。それは、ヴェレゾン期に決まると言っても過言ではありません。人と自然が織りなす理想的なカリフォルニアワインの美味しさを是非ともお楽しみください。
※エノロジスト:栽培学、醸造学に基づき科学的にワイン造りを支える専門家
●文:川邉久之(ワイン醸造技術管理士)