ブドウの樹が休眠期に入った冬のヴィンヤード。シンと静まり返ったその場所で、活発に命を繋ぐ生き物たちがいます。土の中に住む、微生物や小さな虫たちです。
近年、カリフォルニアでは、ブドウの搾りかすから堆肥を作ったり、自然由来の栄養分を生み出すマメやクローバーを共生したり、生態系の維持を考えたサステイナブルな肥料の使用が主流です。固くなってしまう土や肥料を、この土の中の住人たちが程よく分解し、栄養分を作り出して整え、春に目を覚ますブドウに大きな恩恵をもたらします。
栽培家たちは、この姿を現さない立役者に支えられ、その年のブドウの品質を決める「土づくり」に向き合います。自然界の一員として地球環境に配慮し、ブドウに魂を込め、芽を吹く春を待ちつつ、美味しいワインが無事届くことを願いながら。
また、循環型農家であるバイオダイナミックに基づく栽培手法を採りいれる生産者も増え、ブドウの生命と宇宙の調和、ひいては、科学とロマンに溢れたチャレンジも盛んに行われています。
太古から何万年ものドラマが凝縮され、受け継がれてきた土壌で作られたカリフォルニアワイン。グラスに注いで味わえば、時間も空間も飛び越えてたくさんの物語を見せてくれそうです。
●文:川邉久之(ワイン醸造技術管理士)