太陽の恵みを思わせる色のオレンジワインは、見ているだけで心がHAPPYになります。

黒ブドウの果皮を発酵の早い段階で引き上げるロゼワインに対して、白ブドウを赤ワインのように、果汁のほか果皮、果肉、種子を一緒に発酵して造るのがオレンジワインです。このとき、果皮と種から抽出する成分が褐変しワインがオレンジ色になるため、原料がブドウなのにオレンジワインと呼びます。

その歴史はたいへん古く、ヨーロッパのジョージアで地中に埋めた素焼きの甕・クヴェヴリで醸造された紀元前まで遡ります。

信じがたいことに、大昔の白ワイン醸造では、うまく白ブドウを搾れる設備がありませんでした。そこで、搾りにくい白ブドウを赤ワインのように発酵し、酵母と酵素のはたらきでブドウをサラサラに変え、壁画などにみる、テコとネジでできた原始的な搾り機でも搾れるようにした技術的な背景がありました。

オレンジワインは、造ろうとしてできたのではなく、長い歴史のなかで、白ワイン醸造の進化の過程として生まれた必然的な産物だったのです。

一方、カリフォルニアでは、現在我々が知る色の薄いフルーティな白ワインの醸造は、醸造機器で革新的なイノベーションがなされた1950年代まで不可能でした。そして、その後、1970~90年代のカリフォルニアでは果汁を果皮と接触させる“スキンコンタクト”でブドウの特性を強調する技法、低温発酵が醸し出す“フレッシュ&フルーティ革命”、様々なオーク樽を採り入れた “樽発酵”などのエポックメイキングが起きました。その上、健康効果が生む赤ワインブームによる“ブドウの果皮や種子の成分への理解”が、ワイン醸造の選択肢を無限なまでに拡張させました。さらには近年の爆発的な“ロゼワインブーム”が、オレンジワインを歓迎する新たな土壌を生みます。

大昔から醸されていた歴史あるワインを、高い技術と広い視野を持つ醸造家が手掛けた逸品!それが、カリフォルニアが造り出すオレンジワインです。品種や醸造方法も正に変幻自在、雨が少なく恵まれた気候が育んだ白ブドウを、バラエティに富む醸造技法を用いて創作されたオレンジワインは、新鮮な印象を受ける新感覚なスタイルのワインとして皆さんの心をワクワクさせるでしょう。

10月6日は、National Orange Wine Day。カリフォルニアのオレンジワインだけが持つ心地よい果実とグリップ感のバランスを、スパイスを効かせたエスニックフードやBBQ、甲殻類などとともにお楽しみください。

●文:川邉久之(ワイン醸造技術管理士)