白ワインの美味しさは、ブドウがワイナリーに到着した最初の24時間で決まります。この短い時間に引き出される果汁の品質で白ワインの味は象られるとも言えるでしょう。

ブドウの果実は、外側から中心に向かって、果皮、果汁を含んだ果肉、種と大きく3つに分けられます。その中で、ブドウの美味しさと特徴を最も多く含んでいるのが果皮に近い果肉の部分です。ブドウを搾り、様々な工程を経るなかで、この風味が濃厚なパートを澄んだ果汁へと引き出すことで最上のワインへと導きます。

ブドウの醍醐味を果汁に映し込む繊細な仕事は、音楽制作に似ています。プレーヤーであるブドウが奏でる音源を、醸造家はレコーディングエンジニアの如く、自らの五感を張りめぐらせ、ブドウの美しい音色と雑音を適格に区別して、極上の音色のような風味を果汁に転写する。それは、まるで録音プロセスを完成させるような綿密で鋭い感性が求められます。

ジャズボーカリスト、ダイナ・ワシントンのスタンダードナンバー、『What a Difference a Day Makes』の歌い出しは、“What a difference a day made, 24 little hours(一日でこんなにも変わるなんて、ほんの24時間が過ぎただけなのに)”。そして最後に、“And the difference is you(そして、そうさせたのはあなたよ)”。そう、全ては24時間で決まるのです。

カリフォルニアの恵まれた気候の下、1年間育んだ素晴らしいブドウの美味しさを余すところなく引き出し、白ワインを造る24時間のドラマ。カリフォルニアの白ワインは、リフレッシュできるライトなソーヴィニヨン・ブランやピノ・グリから、樽を効かせたフルボディなシャルドネ、また、心も体も弾けるスパークリングワインまで、注がれるグラスに強く反映されていることでしょう。来たる8月4日は、アメリカではNational White Wine Day。さあ、どの白ワインを開けましょうか?

文:川邉久之 (ワイン醸造技術管理士)