瓶やコルクが高々と作業場に積まれ、新しいラベルを付けたワインが出来ていく6月。カリフォルニアでは、ワイナリー全体に活気が満ち溢れます。

この季節には、丹精込めてブレンドされたワインが大きなタンクから小さな瓶に詰められて製品になる最終工程、ボトリングが行われます。どんなに慎重に扱っても、移動による大きな衝撃は避けられず、ワインが持つ本来の風味は一旦閉じてしまいます。これを“ボトリングショック”と呼びます。

瓶詰め後のワインは3カ月ほど静置され、”ボトルヒーリング”という言葉のごとく、”癒やし”の時間を過ごします。この行程を経て、ブレンド本来の風味は蘇り、ようやく一人前のワインとなるのです。

最良の状態となったワインは、アメリカでは9月以降に市場にお目見えします。その後は、11月の感謝祭、クリスマスから年末年始、バレンタインデー、イースターと、家族や友人が集まるホリデーシーズンが待っています。ワインで食事を楽しむ機会が増えるタイミングが続くのです。

ボトリングが終わった初夏、忙しさから解放されたスタッフらは、休暇を満喫し、身も心もリフレッシュして新しいヴィンテージに備えます。

寝かせることでより美味しく。ワインが最高の状態で届けられることを、造り手たちは、いつも願っています。

●文:川邉久之(ワイン醸造技術管理士)