冬のワイナリーは静かですが、とても重要な仕事があります。繊細で最も難しいブレンド(調合)もそのひとつ。

秋に収穫したブドウは、発酵を経て、年末頃には、ワインとしての顔を見せ始めます。この若いワイン達は、様々な栽培地、ブドウ品種、ブドウ畑などのロットで分かれており、熟練の醸造家によってブレンドされ、風味が整った大人のワインへと顔を変えていきます。

醸造家は、仕上がるワインのスタイルを脳裏に描きつつ、細かな調合比を組み立てますが、一度たりとも同じではない自然の産物を理想の形に設計し調合することは、気が遠くなるほど精妙で根気のいる作業です。

それは、まるで異なるメロディーを織り重ね、奥行きと厚みのある、複雑で深い一曲を生み出す巧緻な編曲家のようだと、カリフォルニアでは例えられることがあります。

こうして醸造家は、壜詰め後の変化を予想しつつ、研ぎ澄ませた五感と技で、最高の状態でワインを届けられるよう、粛々とブレンドを行います。

寒さが厳しいこの季節。海の向こうに思いを馳せ、おうちで冬の味覚と一緒にカリフォルニアワインを飲めば、心にも身体にも優しくできそうです。

●文:川邉久之(ワイン醸造技術管理士)