11月のワインと言えば、やれ新酒だ、やれ第3木曜日だと言っている日本人のなんと多いことか・・・。カリフォルニアワインファンは知っています。毎年11月の第3水曜日はジンファンデルの日だということを。この日の発祥は、およそ10年前のこと。通称ザップと呼ばれるジンファンデル・アドヴォケイツ・プロデューサーズ(ZAP)、ジンファンデル愛が止まらない人々の集団が制定しました。

アメリカの暦で言えば、サンクスギビングデーの1週間ほど前。なので、七面鳥と合わせてとか、人が集まるからBBQのお供になどという宣伝文句を現地ではよく見かけます。でも、わが国では他国の赤ワインを飲む人が多そうな時期なので、今回は世間の予測の斜め上を行くロゼを提案します。ベテランワイン愛飲家にはちょっと懐かしい、そしてもしかしたら若者には新しいかもしれない、ホワイト・ジンファンデルです。

やや紛らわしい名前のこのワイン、怪我の功名みたいな誕生秘話があります。時は1970年代、某ワイナリーの当主がジンファンデルでセニエ(※)を実験していたところ、既に発酵が進んでいるロゼワインに、セニエを終えたばかりのまだ糖度の高い果汁を誤って投入。これにより発酵が妨げられ、できたのは白とロゼの間のような微妙な色合いの甘口ワインでした。友人の輸入業者からの勧めで、ホワイト・ジンファンデルという名前で世に出したところ、これが大ヒット。その人気は1980年後半にピークに達し、全米で最も売れたワインのカテゴリに輝いた栄光の時代がありました。

当時は日本でも、ワイン入門者はほんのり甘いロゼから、みたいな定説がありましたが、きょうびこうしたものを嗜んでいると、一部のワイン通からマウントを取られる傾向も。とはいえ、好きなワインを選ぶ自由があって、それに対応できるのもカリフォルニアらしさ。幅広い選択肢のうち象徴的なひとつが、ホワイト・ジンファンデルです。そして根強いファンもいます。その一例、2021年10月8日の投稿で紹介した記事をお読みください。
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ここで紹介するのは、ホワイト・ジンファンデルの中でも頭ひとつ抜けた特別なアイテム。ワインの詳細および楽しみ方については、各画像のキャプションをご覧ください。

※セニエ
濃い赤ワインをつくるために、醗酵が途中まで進んだところで果汁を抜き取ること。ピンクに色付き始めた段階で取り除いた方の果汁を発酵させるとロゼワインになる。

鮮やかなピンク色は、見ているだけで気持ちがあがります。おうちでひとり飲むより、どこかに連れていって、この小さな高揚感を誰かとシェアしたいような。ワインクーラーやワイングッズと共にサッとリュックに詰め込んで、屋外や人の集まるコミュニティスペースなどでカジュアルに。ほのかな甘み軽やかなワインは、会話の潤滑剤にもなりそうです。

熟したイチゴやキイチゴの程よい酸味。赤ワインに仕上げたジンファンデルの果実感がしっかり反映された味わいです。深みのある甘みの秋の味覚と合わせてみました。柿とイチジクと生ハムのサラダ。イチジクの旬は年2回あって、秋が旬の品種は夏品種より甘みが強く、このワインにぴったりです。コリコリした食感と塩気のあるミミガーを散らし、ねっとりした甘い果実との対比を楽しみます。 そして、ブドウ農家さんからいただいた、気持ち華やぐアドバイス。シャインマスカットや巨峰の実を外した状態で凍らせて、アイスキューブの代わりにワイングラスにひと粒、ふた粒。ワインが薄まらず、ひんやり感がほどよく保たれます。

ジンファンデル100% 。他の生産者よりも熟度の高い果実を手摘みし、残糖を少なく仕上げることで、爽やかかつ飲みごたえのある味わいに。ホワイト・ジンファンデルを生産し始めた1983年以来、このつくり方。その価値は多くの専門家に認められ、ワインスペクテイター誌では55本のホワイト・ジンファンデル中トップに選出された実績が。ホワイトハウスで供するのに初めて選ばれたホワイト・ジンファンデルでもあります。

ビューラー・ヴィンヤーズは、ナパ・ヴァレーの東側奥深い山中にあります。1971年に取得した土地で、“山カベ”の存在価値が知られるようになった昨今、ますます注目度が高まっています。カベルネ・ソーヴィニヨンはもちろん、ジンファンデルの評価も高く、ワイン専門誌でランクインするアイテムの常連です。

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@Buehler Vineyards

輸入元はこちら
http://www.caav.co.jp/

文・写真:近藤さをり