カリフォルニアで主に赤ワインになる黒ブドウ品種の中で、栽培面積第4位なのがメルロ。1990年代から2000年代初めにかけては「時のブドウ」で、当時は爆発的なブームに全米が沸いていました。それから少しションボリになりはしたものの、最近ふたたび人気が復活しつつあります。
原産地は、カベルネ・ソーヴィニヨンと同じく、フランス・ボルドー地方です。「痛みのないカベルネ」と、その特徴が描写されることがあるメルロは、渋味がさほど強くなく、果実味がふくよかな赤ワインになります。カベルネに似ているのですが、より優しい味わい。赤ワインの渋味が苦手という人にも愛される、飲みやすいワインになるブドウなんです。
メルロがアメリカ市場で人気を呼んだ秘密のひとつが、その名前の良さです。短く、発音しやすく、響きが美しいというのは、ネーミングの鉄則にのっとっています。この品種名は、ボルドー地方に見られる野鳥、「merle メルル=クロウタドリ」(ツグミの一種)から付いたそうな。クロウタドリの体の色が、メルロの色に似ていたから、また収穫期が来ると、この小鳥がメルロの果実を好んでついばむからだそうで、ロマンティックで詩的ですよね。
●文・写真:立花峰夫