五反田の幹線道路からちょっと入った静かなエリア。見過ごしてしまいそうな場所にあるけれど、ガラス張りの壁を通して清潔感のある店内が見え、安心して入れる雰囲気の路面店です。100種類以上のワインとプレミアムなグラスを揃え、こだわりを見せる一方、堅苦しい感じでなく、気軽にワインを楽しんで欲しいという店主の気持ちが店構えに表れています。

コーヒーを飲むように、明るい時間からゆっくりワインを飲む世界観を提供すべく、15時からオープン(12月は17時から)。カウンター下にはコンセント、Wi-Fiも使えて、ワーケーションの場としても使える落ち着いた空間です。月ごとに入れ替わるグラスワインはデザートワインも含めると15種類ほど。シャンパーニュ以外はアメリカのワインが中心で、カリフォルニアは9割を占めます。

オープンしてまだ2年目。開店当初は、シャルキュトリやチーズなどの冷菜のみでしたが、今年の夏から火を通した料理が加わったので、お腹を空かせて来店しても大丈夫。現状、店主のワンオペであることは変わらないので、キッチンに姿を消してしまうこともあります。でも、カウンターに卓上IHクッキングヒーターを置いて、これで対応できるメニューは、極力接客しながら調理するとのこと。

(写真左から)
オー・ボン・クリマ・ピノ・ノワール・ミッション・ラベル×マグロ赤身のレアステーキ バルサミコソース
表面に塩胡椒してたたき状態にした、中身がほんのり温かいマグロ。シンプルなこの料理には果実味や樽香が穏やかな、華やかすぎないピノ・ノワールを。酸が伸びて香りが持続するワインの味わいと、セミドライトマト、アンチョビ、オリーブ、ピクルスのタプナードの酸味との相性を楽しみます。

ファーディナンド アルバリーニョ×ニュージーランド産パーナ貝のワイン蒸し
ムール貝より身がしっかりして噛み応えのあるパーナ貝。ワイン蒸しのスープには貝の旨みがぎっしり詰まっています。内陸部で育ったアルバリーニョをは、乳酸発酵によるまろやかさのあるタイプで、後味に塩気を感じさせ、海の塩気をたっぷり含むスープと合います。コクのある物同士を組み合わせた、合わない筈のない納得のペアリングです。

ひとりで店を切り盛りするのは、渡部(わたなべ)慶一郎さん。ホテルの専門学校を卒業後、長らく接客業に携わって来ましたが、飲食店勤務を始めた最初の半年間だけは厨房を担当していました。最近提供を始めたばかりの温菜が美味しいのは、昔取った杵柄のようです。前職のレストランで、多くのニューワールドワインを扱った経験から、カリフォルニアワインの知識は豊富。他店ではフランスワインしか飲まないという来店客も、ここで渡部さんに勧められたことがきっかけで、魅力に開眼する例も多いとか。

数字の5を表すクインテットという店名は、Retreatment(再生)、 Relation(関係)、 Refresh(回復)、Relax(くつろぎ)、 Reassurance(再確認)という5つのReから始まるワードを由来としています。ワインを味わうにも、五感、五味など、何かとこの数字が関与します。 年内は大晦日まで、年始も1日と2日営業します。年末年始、美味しいワインを外で飲む行き場を失うワイン難民には、ありがたいお話です。

東京都品川区西五反田7-8-9
puit en pierre A棟1F
営業日と営業時間は公式ウェブサイトをご確認下さい。
TEL:03-6420-0747
https://winebar-quintet.com/

文:近藤さをり
写真:小松勇二